刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

拘置所の単独室で何年の懲役になるのかと怯える日々が続く⑮

 

起訴されてから2週間程で、拘置所への移送

が言い渡された。荷物も少ないので、すぐに

移送の準備が整った。拘置所内へ入所する前

に、荷物の検査と身体検査が行われた。

身体検査では、パンツ一枚で、ケツの穴の中

まで見られ、屈辱的な気持ちになった。◯棟

◯階◯室、称呼番号◯◯◯番が拘置所でのマ

イナンバーとなった。単独室だった。逮捕さ

れてから甘いものを全然食べれていなかった

ので、週に2回、1回につき¥3,000分

迄買えるお菓子を堪能した。板チョコ、メロ

ンパン、ロールケーキ、黒飴、ロイヤルブレ

ッド、チョコとピーナッツクリーム、砂糖飴

などを好んで買った。一度食いだしたら止ま

らず、わずか数時間で全ての品を平らげるこ

ともあった。ホリエモンの徹底抗戦に、元ヤ

メ検弁護士、元受刑者の田中森一氏が古巣の

検察を批判しているということが書いてあっ

た。これから公判で戦うことになる検察の実

態を知っておきたかたったので、今は亡き田

中森一氏の書籍「反転」を購入した。とても

義理人情に深い著者の生き様と、元検察とい

うことで検察のやり方を熟知しているので、

弁護士に反転してからはその裏をかいて、最

も安い(軽い)量刑にもっていくテクニック

はただただ凄いの一言だった。使えそうなテ

クニックには赤線を引いた。

 

単独室なので当然誰とも話しは出来ない。

居室にはTVなどあるはずもなく、あるのは

剥き出しの便所と用便を隠す為の衝立てと

机だけ。トイレのスペースも含めて4畳程の

広さになる。とにかく暇で仕方がない。自分

で持っている本も全て読み終えたし、2週間

に1度交換される官本もすぐに読み終えてし

まう。やることがなくなると、自然とこれか

ら始まっていく公判のことを考えることにな

る。どれ位の量刑になるのかばかりが気にな

ってしまう。公判が始まるに従って、自分の

事件が傍聴者を通じて明るみになりはしない

かという強い不安に苦しめられる日々が続い

た。とても胸苦しく、消えてなくなりたいと

も思った。自分はこんなに弱いのかと思い知

らされた。

公判には阿蘇山大噴火などの傍聴マニアが存

在する。そんな人達が俺の公判を見聞きして

自分のSNSに見解を載せたりはしないだろう

か。名前で検索したら、その様なブログがヒ

ットするようになってしまったらひとたまり

もない。全うな仕事で働くことも難しくなる

だろう。3年前の事件でタイムラグがあるの

で報道されなかったことは不幸中の幸いでは

あるが、インターネットの発達で誰でも世の

中に向けて情報を発信出来る便利な時代とな

ったのだが、公判の内容を実名で報道でもさ

れたら人生半分終わったようなものだと大げ

さかもしれないが本気で考え悩み苦しんだ。

胸がぎゅうっと締め付けられる様に痛く、激

しく懊悩する日々を過ごした。朝、昼、晩の

夕食後には強めの安定剤を服用し、現実逃避

の為に寝る。寝ている間は事件のことを忘れ

自分の置かれている状況を忘れられるが、

目覚めて意識がはっきりしだすと同時に不安

で胸がぎゅうっと締め付けられる。その繰り

返しの日々だった。悪い夢であってくれと何

度思ったことか。数えることができない。消

えて無くなりたかった。留置所では人と話し

が出来るので気が紛らわされるが、拘置所

は刑務官への申し出と面会以外は話しはでき

ない。1人でも割と平気な方だが、この時ば

かりは人と話しができないのがこんなにも

キツイことなのかと痛感させられた。娑婆で

生活をしている時はTVはニュースがほとん

どで、どちらかというとテレビ自体あまり見

る方じゃないのだが、この時ばかりは金を払

ってでもTVを見たくて仕方がなかった。

孤独で辛い日々を送っていた時に弁護士が

拘置所へ面会に来た。弁護士との面会は時間

制限がないので、普段話しができない分まで

事件に関係のないことまで話した。弁護士は

少し迷惑そうな感じだった。弁護士の先生が

「どうしますか」と聞いてくる。その言葉に

対して「3年前の事件なので記憶があいまい

な部分もあるが、やったかもしれない」と初

めて認める発言をした。それを聞いたN先生

が、「自分がやったかもしれないという気持

ちがあるのであれば、公判では正直にありの

ままを話し、被害者に謝罪するべきだ」と珍

しく強い口調で言ってきた。日本の司法では

起訴されたら、99.9%の確率で有罪にな

る。往生際の悪い俺は、この後に及んでまで

も弁護士に、「無罪とれますか」とすがりつ

くように聞いていた。弁護士ははっきりと

「ない」と答えた。だったら認めて謝罪をし

て、情状酌量を狙うしかないなと方向性がは

っきりと固まった。