刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

自供を取れずにイライラしている検事から畳み掛けられる⑪

相変わらず警察の調べでは事件については

完黙を貫いていた。「今後事件について報道

はするのか」と聞いたら、「今のところその

つもりはないが、別件が出てきた場合は分か

らない」と主任が言う。逮捕されてから48

時間と10日が経過し勾留延長となった。

警察の調べは計3回程度しかなかったが、

検事調べは2日に1回のペースで行われた。

自供を取れないことに対して日が経つにつれ

I検事がイライラしているのが分かった。

それだけ証拠が乏しくこのままでは公判維持

が出来ないのだなと都合の良い様に解釈して

いた。検事調べは前日に留置所担当の警察か

ら「◯◯番、明日検事調べだからな」と伝え

られる。ある日こんなことがあった。明日検

事調べと伝えられ送検されたにも関わらず一

向に検事から呼ばれない。結局呼ばれずじま

いのまま留置所へと帰された。留置所に着き

担当警察に「調べしないなら呼ばないでくれ

と検事に伝えて下さい」と言ったら、「とい

うことで、明日検事調べだから」と笑いなが

ら伝えられた。あからさまな嫌がらせに対し

て苦笑いするしかなかった。

勾留されて48時間と19日。20日間の

勾留期限迄今日を入れて残り2日と最終盤に

差しかかった。今日はちゃんと呼ばれて検事

調べが行われた。取り調べ室に入室して手錠

を外され着席して早々、I検事から「昨日は

すいませんでしたね」と笑いながら言われた

のでイラッとしたが、無視していつもの様に

手元を見て完黙を貫いた。するとI検事が

「防犯カメラの映像見ますか」と言ってきた

ので、顔を上げて「はい」と答え、渡された

A4用紙の捜査資料に目を落とした。コンビ

ニ内のカメラからの映像で、被害者がATM

を操作しているところに俺がコンビニへ入っ

てくるというものだった。一瞬ドキッとはし

たが、犯行現場の映像じゃなかったのでホッ

とした。こんなもんが決定的な証拠になる筈

がないと安心してI検事を見たら何故だか知

らないが笑っている。そして、「1年分の銀

行の入出金も調べさせてもらいましたから」

と言ってきた。だから何だよ、それとこの

事件に何の関係があるんだよ、ただ捜査能力

を見せつけて威圧しているだけだ思った。

それから、「ここで罪を認めて刑務所に行く

のと、否認したまま行くのでは大きな違いが

ある」とまで言ってきた。随分畳み掛けてく

るなと思いながら手元を見て黙秘していると

「何も応えてくれないのですね…」と少しの

間が有り、「起訴しますので明日は呼びませ

んから」と淡々とした口調で言われ、検事調

べは終了した。留置所に戻り、一緒に送検さ

れた容疑者達と冷たいご飯を食べた後、6房

へ戻った。検事の予告通り、明日の送検を伝

えられることはなかった。