刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

親身になって接してくれる刑務官の存在は懲役にとって本当に有り難い㊻

調べがあった。担当は「お前のストーリーを

語ってみろ」と以前の調べの時に言った主任

だった。「あのサイコパス刑務官何なんです

か、一方的に絡んできやがって、統括とか金

線の幹部が偉そうにするならまだ分かります

けど、幹部でもないのに誰よりも偉そうにし

やがって、マジで訳分からないですよ」と怒

声を上げたら、「まあまあ、色んな親父さん

がいるもんじゃ」と笑いながら宥めるように

言ってきた。「色んなタイプの親父(正担)

がいるのは分かりますが、あれは度を超えて

ますよ、反抗なんてしていないし、勝手にや

って下さい、指印も押しませんから」と強い

意思表示をしたところで一旦調べが終わり居

室へと戻された。居室に入る寸前に主任から

「後で別の者が調べがくるのでどうするか決

めろ」と言われた。このパターン前にもあっ

たなと思い、前回のパターン通りなら、面白

くて頭の回転が早い担当が来る筈だと思った

ら見事に予想的中してまた直ぐに調べ室へと

戻ることになった。この刑務官Mとは波長が

合う。「G工場へ戻りたいのか、戻りたくな

いのかどっちなの?」と聞かれたので、「せ

っかくの職業訓練なんで、そりゃあ戻りたい

ですよ」と言ったら、「出来る限り戻れる様

な調書を巻くけど、戻れる可能性は五分五分

だと思っていてくれ」と言われた。巻いてく

れた調書は完璧すぎるくらいに自分に有利な

調書だったので、問答無用で指印を押した。

その代わり、「もしも戻れる事になったら、

嫌だとは思うけど先ずは親父に謝罪しろ、そ

して今後2度と調査、懲罰に上がってくる事

はするな」と念を押されたので、「分かりま

した、有難うございました」と頭を下げた。

それから2日経った。昼食前に入浴があり、

風呂から上がって居室へと連行されている時

に、連行担当から、「これから言い渡しがあ

るみたいだから、タオル等一度居室へ置いて

から調べ室へ行くから」と言われた。調べ室

へと連行されて、調べ室の中で待っていたら

調べ室の外で待機している職員が「ウェッ」

と発する声が聞こえた。これは主任や統括に

に対する挨拶なので、お偉方が言い渡しに来

たなと分かった。統括の後ろにはMもいた。

Mが、「気を付け、番号氏名」と言った後、

「◯◯◯◯、◯◯です。」と答えた。それか

ら統括の言い渡しがあった。「今回の件は厳

重注意とするからな、G工場の親父(ヒヒ)

が面倒を見るということだから誠意を見せろ

よ」と言われ尻を軽く叩かれた。今日迄閉鎖

ユニットで過ごして、明日から改めてG工場

へと配役となる。昼食後、居室内で鶴の紙折

り作業をしていたら、閉鎖ユニットの正担が

外側から鍵を開けて、体を半分居室内へ入れ

た状態で話しかけてきた。「明日、G工場に

戻ったら確実に親父(ヒヒ)から厳しい言葉

を浴びせられると思うけど、それはあの人の

パフォーマンスだから、すいませんと謝り続

けろ」というアドバイスをもらった。作業終

了間際にはMも来てくれて、「上手くいった

な、頑張れよ」と言ってくれたので、「Mの

親父のおかげです。有難うございました。」

とお礼を伝えた。この様に親身になって接し

てくれる刑務官の存在は懲役にとっては本当

に大きな精神的な支えとなる。それが仕事な

のかもしれないが、それでも救われる。本当

に有り難いことだと思った。