刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

調査、懲罰はっきり言ってくだらねえしどうでもいい㊽

去年の夏頃は「暴行・指示違反」で懲罰とな

ったので閉鎖ユニットで過ごし、今年の夏は

「喧嘩」事案で閉鎖ユニットで過ごすことに

なった。去年に比べて今年の夏は暑い。空調

は効いていないし、居室の窓を開けても熱風

が入ってきて余計に暑かった。居室内はまる

でサウナだった。昨日の出来事を考える。I

さんは年齢が40歳で、Iさんを睨んだHは

23歳。Iさんは10代の頃に親の反対を押

し切って結婚をしたが、それが原因で親をは

じめ、親戚から絶縁されていた。しかも結婚

した女とも上手くいかず、20代前半の頃に

は離婚したみたいだった。とても大人しく内

向的な性格なので友人もいないのだろう、外

部(娑婆)から手紙も全く無かった。刑期も

まだ3年半程残っていた。俺は残り1年1ヶ

月を切っていたので、Iさんと話す時はいつ

も俺に対して、「もう少しで終わり(出所)

なので、出ることだけに集中して下さい、

何かトラブルが起きた時は自分が代わりに行

きますので」と言っていた。出所後は裏の世

界で生きていくことを決めているとも言って

いた。この人にそんな根性あんのかな、口だ

けな気もしていた。Iさんを睨んだHは家族

が裕福なので、頻繁に差し入れがあった。好

きな音楽のジャンルや娑婆にいる時に行って

いたイベントなどかぶっていたこともあり、

週末などにキメて話すこともあった。お調子

者ではあったが、面白い奴だったので嫌いで

はなかった。いくらIさんが机を叩く音がう

るさかったとはいえ、20前半のガキが40

歳のIさんを睨んだ行為にはイラッとしたの

で、呼んでIさんの前で詰め寄ったのだが、

実はIさんがどういった行動を取るのかを確

かめたいという気持ちがあった。Iさんは俺

に対して、「何かトラブルが起きた時は自分

が代わりに行きますので」と常日頃言ってい

たのに、俺がHを詰めている時にIさんを見

たら自分の手元を見ているだけで何のアクシ

ョンも起こす感じは伝わらなかった。内心、

お前(Iさん)がやられてるんだから、お前

がやれよと思っていたが途中から"やり方”

が分からないんだろうなと思い、ただの口だ

けのオッサンじゃねえかと思っていた。調べ

が始まった。初めて話す主任だった。主任が

言うには、「Iはお前がIの気持ちを汲んで

くれただけでお前は悪くない、事の発端は自

分が机を叩いたからなので、お前とHには罰

を与えずにG工場に戻して欲しいと言ってい

るぞ」と言ってきた。続けて、「HもIを睨

んでいないし、お前とは何でも話し合える関

係なので、お前とは口論等、喧嘩なんかして

いないと言っているが、どういうこと」と笑

いながら聞いてきた。そこで俺が、「IがH

から睨まれた事に腹を立てて、今にもHの方

に向かって行きそうな雰囲気だったので、俺

が間に入って場を収めようとした、HがIを

睨んだかどうかは知らない」と言えば、3人

の話しがピタリと一致するので、Iの「粗暴

な言動」という反則事案だけで済み、俺とH

に関しては不問という可能性も十分あった。

Iは散々デカイことをぬかすアホなオッサン

という人物像が出来上がっていたのでそうい

う方向で持っていこうともしたが、クソガキ

が約倍以上も歳の離れた人にガンを飛ばすと

いうなめた行為を許す気にはなれず、調べで

は一貫して、「Iが机を手の平で"バチン"

と叩いた後にHがIに対してガンをとばしてい

ていて、Iもそれに気付いていた。Hみたい

な平々凡々の苦労知らずで今迄生きてきたク

ソガキが、Iに対してガンをとばすというなめ

た行為に自分自身も腹が立ったし、Hとも普

段から話すことはあったので、自分が間に入

れば丸く収まると思ったし、俺が間に入らな

ければ、Iが後々Hに仕掛けると思ったのであ

の様な行動に出た」と話した。これが偽りの

ない事実だ。Iも俺と同じで事実を認めている

のだが、Hは往生際が悪く、「Iに対して睨ん

でいない」と否認を続けている。だが俺に対

しては、「ダブルビさんとは本音で話し合う

事が出来るし、色々と教えてもらったりする

こともあり仲良くさせて頂いている、ダブル

ビさんとは口論も喧嘩もしていない」と終始

徹底しており、俺からしたら物凄く複雑で微

妙な立場だった。Hがそういう自己保身に走

った為、調べ期間はMAX1ヶ月を要した。

やっと懲罰審査会が開催された。俺の反則事

案は「粗暴な言動等」になっていた。俺と同

じか少し年上の主任クラスが反則事案内容を

読み上げた。部長から「間違いないか」と確

認されたので、「ハイ」と短く答えた。

統括から「今回の反則事案についてどう思っ

ているんか」と聞かれたので、「申し訳ない

と思っています」と答えた。「相手に対して

はどう思っている」と聞かれたので、「ハッ

キリしない微妙な奴だと思っています」と答

えた。統括の隣に座っていて反則事案を読み

上げた主任クラスの者が凄い形相で俺を睨ん

でいるのでミラー現象で睨み返してやった。

それを見た部長が、「お前反省しとるんか」

と聞いてきたので、またしても短く「ハイ」

とだけ答えたところで終了となった。