刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

完黙を貫いたので無罪主張で戦う事に決め、ホリエモンの徹底抗戦を買った⑭

 

留置所では朝食を食べた後、30分くらい

経ってから運動が行われる。運動の際に髭を

剃ることができる。運動といっでも誰も運動

する人などおらず髭を剃った後は各々が話し

をしている。話す気など起きず、髭を剃った

らSさんやその周りに挨拶だけ行い、直ぐに

房に戻って本を読むのがルーティン化してい

た。N弁護士事務所所長のN先生が面会に来

た。N先生は起訴されたので、高い確率で実

刑になると言ってきた。そして、「本当にや

っていないのか」と詰問してきた。仮にやっ

ていたとしても、無罪主張するならそうする

が、こちら側から新しい証拠を示さない限り

難しいとはっきりと言ってきた。新しい証拠

など出てくる筈もなく、どうせ有罪で実刑

なるのであれば、罪を認めて少しでも安い判

決を下される方が合理的だと頭では分かって

いるのだが、往生際悪く、認める決心がつか

ない。N先生も俺がやっていると疑ってる。

「少し考える時間をもらえますか」

と伝えたところ、

「分かりました、いつでも連絡下さい」

と言ってくれた。N先生は父親とも連絡を取

り合っており、「お父様は本人が本当の事を

話すのを望んでる」という事を伝えてきた。

大親友の方に連絡をとって起訴されたことを

伝えて欲しいということと、後輩に○○署に

パクられているので面会に来て欲しいという

旨を伝え、携帯電話の託下げ願いを申し出し

て、その日の面会は終了した。

裁判で罪を認めるか、それとも無罪主張で争

うかどうすればいいのかで心が揺れていた。

ただ完黙を貫いたこと、弁護士や両親に対し

てはやっていないと嘘をつき続けていること

証拠がとぼしいので無罪を勝ち取れる可能性

を考えれば、無罪主張で公判に望む気持ちの

方が強かった。弁護士と面会した翌日、後輩

が面会に来てくれた。いつもニコニコしてい

る奴で、今日も相変わらずニコニコしていた

俺が援デリの仕事をしているのを知っていた

ので、てっきりその件でパクられたと思って

いる。「罪名は何ですか」と聞いてきたので

「強盗」と短く答えたら、笑顔が消えて、

目を見開いて「強盗ですかぁ」と大きな声を

出して驚いた表情になった。

「3年前のことで、○○の路上でナイフを

突きつけて金をとったことになっているが、

やっていない」と伝えたら、「でも起訴され

たんですよね」と言い、「もしも有罪になっ

たら何年くらいうたれそうですか」と聞いて

きたので、「弁護士が言うには、4~6年の

間と言っていた」と答えたら、何も答えずに

心配そうに俺の目を見ていた。「もし有罪に

なったらしばらく会えないけれど頑張れよ」

と言ったら、「絶対待っていますので、頑張

って下さいと言ってくれた。」目には少しだ

け涙を浮かべていた。「カード渡すから銀行

に行って30万おろして、長袖のTシャツに

スウェットのズボン、パンツに靴下それとホ

リエモンの本の徹底抗戦を買ってきてくれ」

とお願いした。

 

銀行カードの託下げ願いを申し出した。

最後に「銀行の暗証番号は弁護士に教えてる

から、弁護士に電話で聞いてくれ」と伝えた

面会室から退室する後輩を見送る。

ドアの前で振り返り、こちらに一礼をしてき

たので、右手を上げた。後輩は相変わらず

心配そうな表情を浮かべていたので、努めて

明るく振る舞い、右手をふった。翌日の午前

中早速お願いをした品を差し入れてくれた。

頼んでいない本もあったが、それは後輩

チョイスで買ってきてくれた品だった。

忙しい中、直ぐに対応してくれたお礼と、

手間賃として1万円を渡した。