刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

逮捕されそうと感じたので、証拠隠滅の為にPCとスマホを処分③

何事もなかったように営業をしていた。

Mもアドバイス通り母親へと頼み、補導され

たという電話の3日後には携帯電話を返して

もらっていた。

母親が一人で警察署まで携帯電話を返しても

らいに行ったという。

もう一人の未成年の子(R)とMには暫くの

間はリピーターだけを相手にさせて、新規の

客は成人している2人のキャストに任せてい

く方向で考えていた。自慢に聞こえるかもし

れないが、MとRの未成年コンビは本当に可

愛かった。新規でつけた客はほぼリピーター

になった。ここまで可愛いキャストを雇って

いるお店も中々ないと思った。

19歳になるまで大切に育てて許可を取った

デリヘル店をOPENさせてそこの2TOP

として働いてもらおうと考えていた。

MとRの2TOPを新規客につけることが

出来ないのは痛かった。じゃんじゃん問い合

わせはあるのに、釣ってはいけない。

需要に対しての供給が間に合わない。

でも同じ轍を踏む事は許されない。

背に腹は変えられない。

月の売上も半分近くに落ち込んでいた。

Mが補導されて2ヶ月近くが過ぎていた。

広告代理店の仕事も終わり、真っ直ぐ家に帰

った。マンションのエントランス前は一方通

行で車一台がギリギリ通れる程狭い。

エントランスから50メートル程離れた所に

トヨタのアクアが停まっていた。

今迄一度もこのような所に車が停車している

のを見た事が無く、物凄く強い違和感を覚え

た。車の近くまで行き車内を確認するが、

車内には誰も乗っていない。

直感で覆面だなと思った。

まさか住処まで特定されているとは、そろそ

ろやばいなとソファでビールと煙草を飲みな

がら考えた。ここはきっぱりと足を洗った方

が身の為だなという結論に落ち着いた。

思い立ったら即行動で同業者の後輩に連絡を

とり一連の流れを説明してキャストを引き取

ってもらうことにした。

後輩はスカウトバックを支払うと気を使って

くれたが、とにかくきれいさっぱり足を洗い

たかったので有り難い話だったが断った。

キャストには家族の者が体調を壊していて

少しの間看病の為地元に帰らなくてはいけな

いという嘘臭い理由を告げた。

商売道具のスマホ4台とPC1台を明日中に

処分することに決めた。

ネットでそれぞれの機種の初期化方法を見な

がら1時間程度で終えた。初期化している時

、愛着のある商売道具を手放す事に悔しさが

なかったといったら嘘になるが、顧客リスト

には妻子持ちの友人がいたり、先輩がいたり

、大企業の重役、弁護士なんかもいる。

こういう人達に迷惑は掛けられないという

気持ちの方が優っていた。

というよりも、めくれたら報道される。

先輩は去年それで報道された。

何よりもそれが怖かった。

翌日、広告代理店の仕事だったが、暇だった

ので3時間程用事で出掛けることを同僚に伝

えて尾行に気を張りながら中古ハードウェア

店へと向かった。店へ向かう途中、歩きなが

らこの仕事を教えてくれた師匠に電話をかけ

て一連の流れを話し、これから商売道具を処

分しにいくところだと伝えた。

「その決断の速さは良いことだ」と慰めて

くれた。「オマワリパクリに来ますよね?」

と聞いたところ、「多分来るけど、証拠も処

分する訳だし、もしもキャストからの面通し

をされて手の平返されたところで前(前科)

も無いし、初犯だから執行猶予で済むよ」と

いう言葉にほっとしていた。前科持ちでこの

業界も長く、表も裏も知り尽くしている師匠

がいうのだから間違いないと安心しきってい

た。執行猶予だったら大体3〜4ヶ月位の拘

束で終わるな、全然大したことねえなという

楽観的な考えに変わっていた。スマホ4台と

PC1台が4万6千円で売れた。

思っていたよりもずっと高く売れてラッキー

だった。