刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

刑務所の加入儀礼とでもいうべき刑務官のイカれた態度㉗

刑務所に入所して最初の1ヶ月は考査期間

といって受刑者の性格や協調性、作業能力や

意欲などを調べられるのがメインとなる。

そうした調べに基づいて配役先の工場が指定

される。新たに入所した受刑者のことを刑務

所では新入(しんにゅう)と呼ぶ。加入儀礼

とでも言うべきか、新入に対する刑務官の態

度は非常に厳しく、アラを探しては怒鳴り散

らし、揚げ足をとっては怒鳴り散らす日々の

繰り返しである。刑務所とはヤバイところだ

と初めて痛感した出来事がある。考査期間の

担当刑務官はアンタッチャブルザキヤマ

ビックリする程似ていたので、懲役の間では

ザキヤマと呼ばれていた。刑務所では免業日

(土日祝日などの休日)や休憩時間以外の手

は、五指をしっかりと揃えて中指から小指の

四指はエビの様に反らなければいけないと教

えられる。だからといって直ぐに身につく筈

はない。運動の為にグランドへ移動する準備

をしていた際のことである。他の懲役より早

く作業服から運動着へと着替えたので待機し

ていた。心ここにあらずで指先の意識が欠け

ていた。背後からザキヤマが近寄ってきて、

耳元で、「指先」と怒鳴ってきた。耳元で怒

鳴られたので、耳がキーンとなり痛かったの

でイラッとしてしまい返事はせずに五指だけ

を揃えた。それを見たザキヤマが顔面を俺の

顔面の30センチくらいまで近づけてきて、

「いいか、刑務所での指先は先ずは五指を揃

えて小指から中指の四指をぐいっと反らすん

じゃぁ」といいながらその手を見せてきた。

本気で言っているのか笑わせようとしている

のか分からなかったので、真似をして「これ

でいいですか」と指先を見せたら「そうじゃ

ぁ、それ以外は認めんけんのう」と言い放ち

去っていった。面白かったのだが、こんな馬

鹿げた真似をあと3年以上も続けなければい

けないと思うと心底嫌気が差して深い溜息を

吐いた。運動の時間も大半の時間を「右へな

らえ」や「回れ右」、「礼」といった初動作

の時間に充てられるので、運動らしい運動や

同囚との会話もほとんどできずに終わること

になる。作業は千羽鶴折りという超単純な作

業を黙々とこなさなければならない。娑婆だ

ったらあれも出来るのに、これも出来るのに

といった具合に次々とアイデアや稼いでいる

筈の金額が浮かんでくる。出来る限り沢山仮

釈放を貰い一日でも早く娑婆に出るのが賢い

考え方だ。その為には、理不尽なことにも耐

えて、性根腐っている職員の嫌がらせにも耐

え抜いていこうとこの時は思っていた。