懲役刑執行開始被告人から受刑者へ。移された棟はどんよりとした㉔
未決勾留が80日なので、実質約3年8ヶ月
の懲役刑となる。判決には納得していたので
控訴はしなかった。控訴可能期間の2週間が
明日迄なので、明日からは被告人ではなく
「受刑者」になる可能性もある。単独室の中
で相変わらず、外ではもう俺の噂は広まって
いるのだろうか、それとも誰も何も知らない
のだろうかという懊悩に苦しめられていた。
弁護士や大親友からの手紙が待ち遠しい。
判決の仮監で一緒だったTさんからガテ
(手紙)が届いた。同じ拘置所に収容されて
いるのだが、被告人同士なので届いたのだと
思う。ガテには、自分よりも随分と刑期が長
いけど頑張って下さいということや、連絡先
が記載されてあった。2日後の手紙の発信日
に返信した。判決から3週間後の午前中、
読書をしていたら、単独室の食器口が開き、
刑務官から、「今から懲役刑執行な」という
ことを伝えられた。とうとう「受刑者」とな
る日がきたのだ。キャリーケースが渡され、
◯◯棟から◯◯棟へと移動になるので荷物を
整理するように告げられた。準備が整い、長
い廊下をキャリーケースを引っ張りながらS
さんの部屋をちらっと覗いたら、凄く驚いた
顔をしていた。恐らくSさんは俺が控訴する
のだと思っていたのだと思う。戦いから逃げ
た後ろめたさがあったが、頑張って下さいと
いう意味を込めてちょこんと頭を下げた。こ
れでSさんとお別れと思うと悲しくなった。
移動した棟は、懲役受刑者専用棟ということ
もあり、移される前にいた棟と比べると、物
静かでどんよりとした感じで不気味だった。
移される少し前に(受刑者になる前に)検察
庁から訴訟費用の請求書が届いた。支払い期
日も明記してある。担当刑務官に、「出所後
支払うということでは駄目なのか」と聞いた
ところ、「そのようにする為に不服申し立て
があるからやってみろ」と言われたのでやっ
てみたが、見事に却下された。請求がある人
とない人がいて、ほとんどの人はないのに、
何でだろう、金持ってると見られてるのか、
それとも事件の心証が悪いからなのかなと考
えつつも期日までにちゃんと支払いをした。
大親友から待ちに待った手紙が届いた。本も
差し入れてくれた。手紙の内容からして、事
件についての詳しい内容は知らない感じだっ
た。面会に行こうと思っていると書いてあっ
たので、「どのタイミングで刑務所へ移送さ
れるかわからない」という理由で断った。