刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

懲役刑執行開始被告人から受刑者へ。移された棟はどんよりとした㉔

未決勾留が80日なので、実質約3年8ヶ月

の懲役刑となる。判決には納得していたので

控訴はしなかった。控訴可能期間の2週間が

明日迄なので、明日からは被告人ではなく

「受刑者」になる可能性もある。単独室の中

で相変わらず、外ではもう俺の噂は広まって

いるのだろうか、それとも誰も何も知らない

のだろうかという懊悩に苦しめられていた。

弁護士や大親友からの手紙が待ち遠しい。

判決の仮監で一緒だったTさんからガテ

(手紙)が届いた。同じ拘置所に収容されて

いるのだが、被告人同士なので届いたのだと

思う。ガテには、自分よりも随分と刑期が長

いけど頑張って下さいということや、連絡先

が記載されてあった。2日後の手紙の発信日

に返信した。判決から3週間後の午前中、

読書をしていたら、単独室の食器口が開き、

刑務官から、「今から懲役刑執行な」という

ことを伝えられた。とうとう「受刑者」とな

る日がきたのだ。キャリーケースが渡され、

◯◯棟から◯◯棟へと移動になるので荷物を

整理するように告げられた。準備が整い、長

い廊下をキャリーケースを引っ張りながらS

さんの部屋をちらっと覗いたら、凄く驚いた

顔をしていた。恐らくSさんは俺が控訴する

のだと思っていたのだと思う。戦いから逃げ

た後ろめたさがあったが、頑張って下さいと

いう意味を込めてちょこんと頭を下げた。こ

れでSさんとお別れと思うと悲しくなった。

移動した棟は、懲役受刑者専用棟ということ

もあり、移される前にいた棟と比べると、物

静かでどんよりとした感じで不気味だった。

移される少し前に(受刑者になる前に)検察

庁から訴訟費用の請求書が届いた。支払い期

日も明記してある。担当刑務官に、「出所後

支払うということでは駄目なのか」と聞いた

ところ、「そのようにする為に不服申し立て

があるからやってみろ」と言われたのでやっ

てみたが、見事に却下された。請求がある人

とない人がいて、ほとんどの人はないのに、

何でだろう、金持ってると見られてるのか、

それとも事件の心証が悪いからなのかなと考

えつつも期日までにちゃんと支払いをした。

大親友から待ちに待った手紙が届いた。本も

差し入れてくれた。手紙の内容からして、事

件についての詳しい内容は知らない感じだっ

た。面会に行こうと思っていると書いてあっ

たので、「どのタイミングで刑務所へ移送さ

れるかわからない」という理由で断った。