刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

拘置所での集団運動で、まさかの強盗殺人の無期との遭遇㉕

刑務官から「集団運動出たいか」と聞かれた

ので「出たいです」と答えた。拘置所に入っ

てから初めての集団運動で、同じ境遇の者達

と話しが出来ることに少し嬉しくなった。

俺も含めて3人で4畳程の運動場に入った。

2人とも年上で、1人は40代で小柄でやた

らと目がギラギラしている。もう一人は60

歳くらいの肥満帯で、あごに手を当てながら

どこか遠くを見つめている。40代の小柄な

人が、「俺、傷害で懲役8ヶ月のションベン

刑だけど、何をしたの」と聞いてきたので、

「強盗で4年ですね」と答えた。どこで捕ま

ったのかや、どんな事件だったのかを2人で

話していた。もう1人の60歳位の肥満帯の

人は相変わらずあごに手を当てながら遠くを

見ていたので、聞くのに躊躇したが、「何さ

れたんですか」と聞いてみたら、やっと視線

をこちらに向けて、「強盗殺人」と答えた。

その瞬間、俺と40代の人も言葉を失った。

内心、こんなやべぇ奴とこんな狭い運動場に

いて大丈夫かという気持ちになったが質問を

続けることにした。「強殺なら無期ですか」

と聞いたら、無言で頷いた後、自分の事件の

事を話し始めた。「共犯の女(これも無期)

から、知り合いに金持ちがいて、自宅に大金

があるから盗もうと誘われたんだよね。それ

で一緒に被害者の家に行って酒に睡眠薬を入

れて眠らせてから家中を物色したら、現金

180万円が見つかった。その現金をバッグ

にしまったまではいいんだけど、顔見られて

るけどどうしようと共犯と相談したら、共犯

が、私が家を訪れたらもう死んでたってこと

にしようと提案してきて、だからアナタが殺

してって言われたから最初は当然断ったんだ

けど、共犯から根性無し、殺さないと捕まっ

てしまうよと言われたから、確かにそうだと

思って台所にあった包丁で喉元を掻っ切って

殺した」と言い放ち、少しの間を置いてから

「30年だから出所は90になるころか…も

うどうでもいい」と諦めの言葉を発した。

「犯行後どのくらいの期間で捕まったのか」

と聞いたら「2週間後に先に共犯が捕まって

その1週間後に捕まった」と言っていた。

そこで話しは終わった。40代の人を見たら

増悪のこもった目で無期囚を睨んでいた。

無期囚は再びアゴに手をやり、遠くを見つめ

ていた。無期囚の体からは、人間の体臭とは

思えない動物の死骸の様な臭いが漂っていた