刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

充実している職業訓練と、無期懲役受刑者、見達大和の本との出会い㉙

職業訓練の際には毎回体育館にて職業訓練

入退出が行われる。職業訓練を終えた者達と

これから職業訓練を受ける者達に対して、

幹部職員から激励の言葉をかけらる。「職業

訓練の受講を無事に終了した者に対してはそ

れなりの評価をするが、途中でトラブル等の

問題を起こして調査、懲罰に上がる者は、一

般工場でそれをするよりも思い罰を与える」

と壇上からこれから職業訓練を受ける懲役に

対して釘を刺した。1時間程で入退出が終了

し、新しいB工場へとキャリーケースを押し

ながら移動した。翌日から早速職業訓練が始

まった。テキストに則って民間の講師が講義

を始める。A工場では物凄く単調な作業だっ

たので、それに比べると天と地ほどの差を感

じた。先輩受刑者が言っていた、天国のよう

に感じるというのは本当だった。オラオラ粋

がっている奴もいなかったのでとても過ごし

やすかった。職業訓練に選ばれてきている人

は、罪名はともかく、知能犯の割合が多かっ

た。その中でも特に仲良くしていた人は、年

齢は50代で自分と比べても遥かにビジネスな

どにおいて経験が豊富で金も持っているので

余裕があった。話していて勉強になったし、

とても楽しかったので、職業訓練の6ヶ月間

はその人とばかり話していた。ある日、備え

付けの読売新聞の広告欄を見ていたら、女子

高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法

〜知的すぎる無期懲役囚から教わった、

99.9%の人がやらない成功法則〜

 

というタイトルの書籍の広告が目についた。

その無期懲役囚というのは美達大和(ペンネ

ーム)という人で、留置所で、「人を殺すと

はどういうことか」という美達大和氏の本を

読んで印象に残っていたので、購入した。

 

本のタイトル通り美達大和氏さんはとにかく

頭脳明晰で、女子高生サヤカと文通していく

上で、サヤカがどんどん成長していくという

ストーリーはとても面白かった。美達大和さ

んの妥協せず、目的、目標は何が何でも達成

するという生き方、強靭な肉体、精神力を築

き上げる為に何十年と続けている筋トレやハ

ードワーク、仮釈放を放棄して獄中死を決め

ているにも関わらず、向上し続けることを決

して諦めず、養護施設に寄付を続けていると

いうことを知り、大きな衝撃を受けた。それ

からは美達大和さんの本を買い漁った。

牢獄の超人

 

刑務所で死ぬということ〜無期懲役囚の独白〜

 

死刑絶対肯定論

 

を立て続けに読んだ。

特に、牢獄の超人は美達大和さんが収容され

ているLB刑務所の実態がわかり易く書かれ

ていたのでとても読み易く、とても面白かっ

たので、何度も読み直したし、同囚にもオス

スメ本として勧めた。同囚も面白いと言って

いた。美達大和さんという生き方にインスピ

レーションを受けて、先ずは運動時間に筋ト

レ、ハードワークを行うことから始めること

にした。ガキの頃から運動神経は良かった。

他の教科は通知表の5段階評価のうち2とか

3ばかりで5など一度も取ったことはなかっ

たが、体育だけは大体5で、悪くても4だっ

た。小学校の頃はサッカーと空手を習ってい

た。中学に入ってからは空手は辞めたが、サ

ッカーは高校1年の夏頃まで続けていたし、

社会人になってからも適度に運動はしていた

ので基礎体力はあると感じていた。運動時間

は30分程度しかない。なのでランニングなど

有酸素運動は5分以内に抑えて、残りの時

間は腕立て伏せを中心とした筋力トレーニン

グを1人でストイックに行った。筋トレをや

っているグループから一緒にやろうと誘われ

て、何度か一緒にやった事はあるのだが、し

っくりこなかったので、運動時間は1人で真

冬でも汗でダラダラになる迄ストイックに時

間一杯まで続けた。最初のうちは腕立て伏せ

×30を5セット、指立て伏せ×10を3

セットといった具合に小分けして回数をこな

していたのだが、次第に腕立て伏せ×50を

4セット、指立て伏せ×25を2セットと

いった具合に連続で行う回数を増やしていく

ことにした。継続は力なりとはよく言ったも

んで、いつの間にか腕立て伏せ連続200、

指立て伏せ連続50をこなせる迄になって

いた。それくらいから腹筋、背筋、下半身、

インナーマッスルの筋力トレーニングにも

以前よりも時間を割くようになったが、

メインは腕立て伏せにした。それは何故かと

いうと、自分の中では腕立て伏せが単純に1

番キツイからだ。肉体を鍛えるということと

同じくらいに、いや、それ以上に精神を鍛え

るというのが目的だからだ。胸板は厚くなり

腕は太くなり、腹は割れて、太腿は太くなっ

た。体は日を増す毎にどんどんとゴツくなっ

ていた。それに比例して精神力もごつくなっ

たと言いたいのは山々だが、精神力はまだま

だ未熟だった。資格試験にも無事に合格して

あっという間に半年の訓練期間が過ぎていっ

た。訓練中に職業訓練の募集がかかっていた

ので応募していた。目立ったこともしてない

し、資格も無事に取れたし、職業訓練から職

業訓練には渡りやすいと先輩受刑者が言って

いたので渡れるだろうと思っていた。職業訓

練の入れ替えの言い渡しは月曜日の矯正指導

日の13:00〜13:30の居室内運動時

間中に言い渡される。単調作業のA工場には

戻りたくねえなと思いながら筋トレをしてい

たところ、外側から居室内のドアが開き、職

員から、「C工場の職業訓練になるので移動

の準備をするように」と言われた後、キャリ

ーケースを貸与された。これで3ヶ月間刑期

が削れると思うとテンションが上がった。秋

から冬に差し掛かる時期で、すっかり肌寒さ

を感じるようになっていたが、タンクトップ

一枚で汗で床に汗溜まりが出来ていた。時間

一杯まで筋トレを行った。