刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

留置所で一緒の房になったのは、まさかの大物だった⑧

◯房には先客が一人いた。廊下から代用監獄

越しに見えた。腕を組みあぐらの姿勢で白い

壁にもたれかかっている。官物のグレイの半

袖シャツとグレイのジャージのズボンと俺と

同じ服装だった。半袖から極彩色の入れ墨が

はみ出して見える。胸板は厚く、腕は太く見

た目の迫力が半端ない。年齢は60位だろう

か。一発でその筋の方だと分かる。しかもか

なりの大物感が伝わってくる。外側から鍵が

開けられ扉が開き入獄した。ガチャンと扉が

閉まる音が響き、2人きりとなった。今迄出

会ってきたどんな人間よりも迫力がある。そ

の迫力に圧倒されてしまい、どうするべきか

分からなくなり、立ったままそわそわしてい

た。それを感じとったのか、「座りなさい」

と右手で床をドンドンと軽く叩かれたので、

言われるまま右隣へ腰をおろした。こちらか

ら名前を告げ、宜しくお願いしますと挨拶を

したら、優しくも丁寧な口調で挨拶を返して

くれた。予想通りその筋の大物の方だった。

関東最大組織の一次団体の親分衆の1人だっ

た。失礼に値するかもしれないと思いながら

も歳を聞いたら、なんと76歳だった。あまり

の驚きに、「マジですか!50後半〜60位

と思いましたよ!」と自然と驚きの声を上げ

ていた。そんな俺の姿が可笑しかったのか、

「ハッハッハ」と声を上げて笑っていた。

住民票と違う場所に住んでいたという理由だ

けで今朝パクられたという。完全に大物組長

をパクる為の警察の何でも有りのやり方だ。

「そんなのだったら俺もやっていますし、五

万といますよ」と言ったところ、「下の者だ

けじゃなくて、たまには上の者もパクらない

と示しがつかないのだろう」とやや怒り口調

だった。以前と違い、警察とヤクザの関係も

大きく変わってきた、融通が聞かなくなった

と言っていた。俺の事件の話しになったので

、路上で首元に刃物を突き立てて脅して金を

奪った路上強盗ということをざっくりと伝え

たところ、またしても「ハッハッハ」と声を

上げて笑った後、私達の業界でそんなことを

したら大変なことになると笑いながら言われ

た為、苦笑いするしかなかった。昼食の時間

になり、コッペパン2つとおかず1品を食い終

わったら急に眠くなり、いつの間にか眠りに

落ちていた。