刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

年末年始の特別菜(お菓子)を賭けて将棋をした結果Uが全勝するも㉜

ユニット制限がかけられて2週間が経った。

犯人も分からないままで、これ以上制限を続

けても懲役の不平不満が溜まるだけだと判断

されたかどうかは分かりかねるが、ユニット

制限が解除された。俺が詰め寄ったMと、M

と特に仲良くしていたKは揉め事に巻き込ま

れたくないと思ったのだろう、Wと次第に距

離を取るようになった。WとUは相変わらず

常に一緒にいた。MとKが少しづつ距離を置

きだしたことにより、一層絆が深まっている

ように見えた。1年の終わりが近づいていた

12月中頃、Nちゃん(22歳)から提案も

兼ねた相談を受けた。年末年始の連休には特

別菜といってお菓子が配布される。UからN

ちゃんに対して、そのお菓子をかけた将棋の

勝負をしようという話しをもちかけられたの

で、その話しに乗ったところ、全敗してしま

い、特別菜を全てあげなければいけなくなっ

たということだ。Nちゃんは将棋の腕には多

少自信があったみたいなのだが、Uの将棋の

腕前には全く歯が立たなかったみたいだ。勝

負事なので本来ならば有無をいわさずあげな

ければいけないのだが、相手がUとなれば話

しは別だ。「連休に入ったらチリ紙を入れる

袋を渡すので、それに入れ毎回渡すように」

とUから言われているみたいだ。その袋を渡

された段階で職員に、「Uから菓子を渡すよ

うに強要されている。それが職員に見つかっ

たら、この間みたいにユニット制限がかかっ

て皆に迷惑をかけるのが嫌だったので上がり

ます」と言えばUも確実に上がる事になる。

NちゃんもU達の勝手気ままな横暴さに腹を

立てていた。自分が犠牲になってUを道連れ

にして一緒に上がってもいいのだが、紅白歌

合戦など普段放送されない番組が見れなくな

ることに対して本当にこれでいいのかと葛藤

していた。なので、「刑務所にいる限りどこ

にいようが一緒だ。俺がNちゃんの立場なら

道連れにして絶対に上がる」と伝えたところ

「そうですよね、じゃあ行ってきます!」と

言った後、「紅白見たかったですよ〜」と言

ってきたので「他の皆もNちゃんと同じ立場

になったら道連れにすると思うよ」と説得す

るように言ったところ、「そうですよね、来

年は年男なので戦ってきます」と笑顔で言っ

た。完全に腹を括ったみたいだ。大晦日、U

がNちゃんに予定通りチリ紙の袋を渡してき

た。Nちゃんはそれから居室に戻り、セルコ

ール(職員に繋がる電話)を押して駆けつけ

た3人の職員に連行されC工場を後にした。

Uは俺と居室が隣なのだが「ハァ〜」と深い

溜息を何度も吐いていた。それからしばらく

してUの居室に3人の職員がやってきた。隣

だからよく聞こえたのだが、職員が、「何の

ことか分かるな」と聞くと「分かりません」

と鉄板を張っていた。でもそんなことを言っ

たって結果は一緒、Uも職員から連行されて

C工場を後にした。その際に、いたるところ

の居室から「おめでとう」や「バイバーイ」

「ドンマーィ」、「下手打ち〜」といったU

を馬鹿にする言葉が発せられていた。