刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

自分で自分の命を絶つことが出来る程俺は強くなかった㉒

今日、人生を終えようと考えているのに、

普段通りに目が覚めて、普段通りに朝食を頂

いた。あと30分後くらいに運動が始まる。
そこで俺は首を吊って死ぬんだ。目を閉じ、

怖くない、怖くない、苦しくない、苦しくな

い、楽になれる、楽になれると何度も言い聞

かせた。俺が死んだら悲しむ人はいるのかも

しれないが、そんなことよりも自分で命を絶

つ恐怖に打ち勝つことだけに集中していた。

運動の時間が始まり、居室のドアの外から鍵

が開けられた。検身を受け、単独運動場に刑

務官から連行された。単独運動場の扉が閉ま

り、刑務官が去って行ったのを見計らって、

素早く麻の衣服を脱いで、両袖をコンクリー

トジャングルに固結びでギュウギュウにくく

りつけた。そして衣服に首を引っ掛け、グル

ンと体を1周まわした。一瞬で頸動脈が絞ま

り、味わったことのない苦しさに襲われた。

体重が75キロあって、その体重を首元で支

えている状態で、あと2、3秒で死ぬなと思

った瞬間、死にたくないという気持ちが強烈

に沸き上がってきた。両手で首元の衣服を押

さえ、少し隙間を作り、逆方向にグルンと回

った。そのまま地面に倒れこんだ。排水溝の

金属部分に左の手の平をぶつけ、2センチ程

切った。頭に酸素が行き届いていないため、

頭がボーッとして舌がビリビリ痺れていた。
巡回の刑務官に、くくりつけた衣服を見られ

たら不味いので、フラフラした状態で立ち上

がり、急いで衣服を外した。その後は壁に寄

りかかって呆然としていた。寸前のところで

駄目だった。何故駄目だったのか、やはり恐

いからだ。それに尽きる。結局自分の命を絶

てる程強くはないのだと痛感した。