刑務所獄中記【人の不幸は甘い蜜】刑事施設拘束1530日

自分よりも不幸で不運な人がいることを知ることで、悩んでいる人や迷っている人に少しでも元気を与えることが出来れば良いなと思います

真夏の刑務所の暑さと臭さ。作業席が横のハーフのあだ名はドリアン㊱

懲罰が終わり閉鎖ユニットから解放されるこ

とになった。朝食後に主任が居室まで来てD

工場への配役を言い渡された。D工場へ連行

されている途中に職員から、「D工場は厳し

い工場なので、頑張るんだぞ」とアドバイス

を受けた。D工場に着いてから、工場長から

D工場のルール等の説明があった。人とまと

もに長い時間話すのは1ヶ月ぶりなので、

説明に対して頭がついて回らなかった。

作業は拡大鏡を使った部品の検品作業。閉鎖

ユニットで調査期間中に課せられる鶴折り作

業並に単調な作業だった。ホールでは座る場

所が完全に固定化されている上に、卓長とい

う存在がいる。その名の通り、卓のメンバー

のボスでまとめ役だ。卓のメンバーが他の卓

のメンバーと揉めた場合は各々の卓長同士で

話し合いにて解決し、喧嘩防止の役割なども

担っていた。ただでさえ拘束されているのに

作業が終わってからもガチガチの人間関係で

固めるというのが自分には合わなかったので

基本的には居室内で過ごすことにした。何人

かの卓長から、「うちの卓に入らないか」と

いう誘いはあったが、資格試験の勉強をして

いるのでと嘘をついて角が立たない様にやん

わりと断った。運動の時間も同じ卓のメンバ

ーで過ごすという徹底ぶりはある意味凄いと

思った。なので、運動時間は誰にも邪魔され

ることなく、一人で黙々と誰よりも筋トレを

行うことができた。8月の真夏なので運動後

はシャワーを浴びたように汗をかく。ベタベ

タして気持ち悪いし、工場内はサウナの様に

暑い。正担の嫌がらせかどうかは分かりかね

るが、俺の作業席の隣は日本とアメリカのハ

ーフで強烈なワキガだった。しかも口臭も強

烈だった。ドリアンというあだ名がつけられ

ていた。作業中、作業の段取りなのでドリア

ンが俺に用件がある時は、右手を垂直に上げ

て「ハイ」と言った後、担当が「用件」とい

うので、「〇〇さんと作業の件で交談許可を

お願いします」と言う。俺の作業性はドリア

ンの右側になるので、脇が解放中は凄まじい

臭いが発せられる。なのでその時は必死に息

を止めて吸い込まない様にするのだが、誤っ

て吸い込んでしまった時は殺意が湧く。

そんな地獄の様な作業時間だったので、作業

が終わって居室に戻ってからは、刑務官がい

ないのを確認してから入念に首筋から顔、髪

を洗うルーティンが出来上がっていた。地獄

の様な作業時間が終わり、いつもの様に髪と

顔を洗っていたら急にカンと音が鳴り、食器

口が開き、「そのままこっちに来なさい」と

言われたので、「今、目に石鹸がついている

ので来れませんよ」と言ってダッシュで顔の

石鹸を洗う様にして髪のシャンプーを洗い流

した。その間も食器口から、「いいから早く

こっちに来なさい」と言ってくるので、「目

に石鹸が入っているのでちょっと待って下さ

いって」と強めな口調で言い返し洗い流した

ところでタオルで顔を拭く様にして髪を拭い

た。どうせ巡回の下っ端の刑務官だろうと高

を括って眼鏡をかけたら金線の主任だった。

「ヤバッ」と胸の中で叫んでいた。居室のド

アが開き、「お前、髪洗っとったな」と言わ

れたので「洗っていないですよ」と答えた。

すると話しを変えて「こっちに来いと言った

のに何で来なかったんだ」と言われたので、

「だから目に石鹸が入りそうだったからです

よ」と言い返したところ、「出ろ」と言われ

てそのまま処遇調べ室へと連行された。暫く

して統括がやってきて、「不正洗髪と反抗の

疑いで調査に処する」と言われ、またしても

閉鎖ユニットへと連行されることになった。

たったの2週間で閉鎖ユニットへ戻ることに

なってしまった。